「…ガキ過ぎんぞお前」


桃城の、少し怒った声が上から響いて越前はばつが悪そうに帽子を深く被る。


「桃先輩は知ってたんすか」
「知らねーのはお前ら一年と、部長だけだよ」



その言葉に越前は驚きを隠せない。


「わかりやすいからな、エージ先輩。お前だって昨日みただろ?」


あんなに幸せパワーだされてたら気づかないほうがおかしいぜ、まあ、部長は例外だけどよ、と苦笑いして桃城は頭をかいた。


「皆で叶わない恋愛を見守ってるわけ?」
「…叶わないってこともねーんだよなあ、ねーんだよ、これが…」


はあ?と越前が桃城に口を尖らせると、桃城は「見てみろって」と指差した。その先には部内を見渡す手塚がいる。
しかし視線はあるイッテイノ場所を見つめている。
それが、少し遠く離れた菊丸へ向けられているのがようやくわかった。
厳しくも威厳もない眼差しだった。



「あんなそっけない感じでも、エージ先輩を気にかけてんだよ。乾先輩が言うには周りより19%以上エージ先輩見てる確率が高いってよ」
「…意味わかんない。だったらなんでさっさとくっつかないわけ?」
「お互い遠慮してんだろーなー…手塚部長は部長だし、エージ先輩もそれわかってるし」
「わかんない」
「だから「わかんないッス、俺には」


桃城の言葉を遮って越前はさっさとコートに行ってしまった。


「…子供だなーったく…」


桃城は盛大にため息をつくと、後をついていってコートに戻った。



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わけわかんない。
好きなら付き合えばいいじゃん。何遠慮って。それが日本人のやり方なわけ?って俺も日本人だけど。
むかつく。菊丸先輩も部長も桃先輩も、子供扱いも、いらつくのも全部。



越前はブスッとしながら夕焼けの帰り道の自販機でファンタを買ってイッキ飲みをした。
途中、気管に入ってむせてしまう。
むかつく。


なくなった缶をおもいっきりゴミ箱に投げつけてやった。



ベンチにラケットケースを投げつけてドカッと座る。ハー、とため息をつく。こんなの、全然俺らしくないよ、カッコ悪。


大体最初の発端はあの猫先輩だよ。俺に偉そうな説教して、自分は部長にデレデレだとか止めてよね。
何あの不細工なしまりのない顔。頬なんか遠くからみてもわかるぐらい赤みあってさ。たかだかグリップぐらいで舞い上がってて、めちゃくちゃ浮かれてて。



『ありがと、手塚』




そう言ったのだろう菊丸先輩は、マジで、ほんとに、バカみたいに、、




「−−−おちび?」



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